mmm-skloのブログ

心にズンときたり、きゅんときたりした言葉を残しておきたい。

『対岸の彼女』

by角田光代

 

人と出会うということは、自分の中にその人しか埋められない鋳型を穿つようなことだと思っていた。人と出会えば出会うだけ、だから自分は穴だらけになっていくのだ、と。

 

けれどもその穴は、もしかしたら私の熱源でもあるのかもしれない。時に仄かに発光し、時に発熱し、いつも内側から私を温めてくれる得難い空洞なのかもしれない。

 

『農ガール、農ライフ』

by 垣谷美雨

「あんた、もう33歳になったんだろ。男から見たら賞味期限ぎりぎりだよ。私の時代だったら、とっくに期限切れだけどね」

 

富士江の言い方に、鳥肌が立つ思いがした。賞味というのは、美味しく味わうという意味だ。自分は単なる商品で、これも期限切れ間近らしい。

 

悔しいことだが、女である自分でも、その感覚ははっきりわかる。というのも、日本はヌード写真で溢れている国だからだ。書店でもネットでも、見ようと思わなくても、女子供の目にも入ってくる。だから、どういう女が美味しそうなのかという男目線を嫌というほど思い知らされながら、日本の少女は大人になっていく。

 

最近はイケメンのヌード写真も増えてきた。女の「品定めされる側の性」の痛みを、男も少しは思い知ればいい。そう行った底意地の悪い気分になることもあった。

親の一言

by両親

うっとおしくたってうるさくたってなんだって、気分を入れ替えてくれる人がいるのはありがたいことだよ。関係ないこと話しかけられてるうちに、仕事で言われたことなんて忘れちゃうでしょ。ずーっと仕事で言われたことばっかり考えたら、辛くなっちゃうでしょ。

 

萌はきっとどこでだってうまくやっていけるけど、一つだけ、考えていることを切り替えるのが下手すぎる。地方に行ったら、自分で自分を切り替える方法を見つけなきゃね。

それから、やっぱり萌自身の家族ができるといいよね。

『卒業』

by重松清

 

ひとは、どんなときに死を選んでしまうのだろう。絶望でも悲しみでも、借金でも身内の不幸でも失恋でもなんでもいい、自殺に価する条件が揃ったとき、なのだろうか。そんなに割り切れるものではないような気がする。コップの水は満杯になってからあふれてしまうわけではない。ほんのわずかでも、コップそのものが傾いてしまえば、こぼれる。

 

誰のコップも、決して空っぽではないだろう。コップは揺れている。きっと誰もが、それぞれの振り幅で。