2019-06-17 『卒業』 by重松清 ひとは、どんなときに死を選んでしまうのだろう。絶望でも悲しみでも、借金でも身内の不幸でも失恋でもなんでもいい、自殺に価する条件が揃ったとき、なのだろうか。そんなに割り切れるものではないような気がする。コップの水は満杯になってからあふれてしまうわけではない。ほんのわずかでも、コップそのものが傾いてしまえば、こぼれる。 誰のコップも、決して空っぽではないだろう。コップは揺れている。きっと誰もが、それぞれの振り幅で。