2019-06-17 『対岸の彼女』 by角田光代 人と出会うということは、自分の中にその人しか埋められない鋳型を穿つようなことだと思っていた。人と出会えば出会うだけ、だから自分は穴だらけになっていくのだ、と。 けれどもその穴は、もしかしたら私の熱源でもあるのかもしれない。時に仄かに発光し、時に発熱し、いつも内側から私を温めてくれる得難い空洞なのかもしれない。